
印刷博物館に行ってきた.「プランタン=モレトゥス博物館展 印刷革命がはじまった:グーテンベルクからプランタンへ」という展示をおこなっている.(7/24まで)
印刷博物館に入ると”プロローグ展示ゾーン”がある.これは印刷(情報記録)の歴史を時代ごとの資料を並べて一望できるようにした展示だ.まず「ラスコーの壁画」や「死者の書」,「ハンムラビ法典」,「ロゼッタストーン」などの実物大レプリカがある.竹簡や金印もある.印刷技術が現れると,百万塔があり,当然,グーテンベルクの聖書がくる.銅版細密画もあり,北斎・写楽もあった.大量印刷の時代のポスター・雑誌を経て,デジタル時代に至る.CDやプリント基板,ICに印刷の技術が使われていることは常識かもしれないが,壁画からICに至る情報の歴史を”印刷”というキーワードでつないだのはスマートだ.この展示の完成度は高い.
”プロローグ展示”の最後にあった,新札のコーナーと錯視(静止画が動いて見える)のコーナーは小さいが面白かった.
そして,やっと企画展示「プランタン=モレトゥス博物館展」がはじまる.プランタン=モレトゥス博物館は,クリストフ・プランタンが16世紀にフランドルのアントワープに開いた印刷所跡に作られた印刷出版関係の博物館だ.
活版印刷の歴史はグーテンベルクの42行聖書の出版(1455 ドイツ)に遡る.その後,50年間に出版された書物を揺籃本と呼ぶそうだ.この時期に活版印刷はヨーロッパに広く伝わる.
クリストフ・プランタンは製本を仕事としていたが,左腕(?)を痛め,出版業に転職した.アントワープにオフィシーナ・プランティニアーナという印刷所を設立した.16世紀中頃のことだ.この頃は印刷所が出版社だった.
オフィシーナ・プランティニアーナはさまざまな書物を出版している.多言語訳聖書は6000頁の大部な書物だ.スペイン帝国がキリスト教世界の統一を目指して戦争をしていた時代であり,アントワープはスペイン領であったことを考えると,この書物の出版により為政者の信をえたのもうなづける.調べてみるとフェリペ2世はネーデルラントで恐怖政治を引いていたようだ.フランドル・ブラバント両州からは1万人以上の商工業者が亡命したらしい.(プランタン自身は人文主義者でエラスムスの著書も出版している.)
また,1582年にはグレゴリオ13世によりグレゴリオ暦が制定させた.この暦が出版されている.万年カレンダーなのだが,豆本もあった.豆本もそうだが,細かい活字を印刷した書物も多い.
印刷機のレプリカも展示されていた.活字を鋳造から,印刷までが映像と現物で紹介されている.
同時代に生きた人々という展示では,ブリューゲル,ルーベンス,メルカトルも紹介されていた.ルーベンス作のプランタンの肖像画もあった.孫のモレトゥスがルーベンスと親交があったらしい.ルーベンスは挿絵も多く手がけている.
印刷博物館にはVRシアターがあり,「プランタン=モレトゥス博物館」を上映している.この手の映像は退屈するものが多いのだが,これは面白かった.映像も美しい.そのまま「世界ふしぎ発見!」にできそうだ.
このあとに,常設展が続く.ロバート・フックの「ミクログラフィア」は顕微鏡をつかって描いた蚤の拡大図で有名だが,この蚤の頁が展示されている.その隣には17世紀の顕微鏡の復元模型があり,蚤を見ることが出来る.
後半の常設展示はさらっと流したのでぼくは2時間でまわった.常設展示や体験コーナーも満喫すれば3時間以上は楽しめる博物館だ.
(2005 5/2)