September 19, 2006
昨年の今頃なにをしていただろうと,blogの記事を見直してみると,館林美術館で「ハンス・アルプ展」,ブリヂストン美術館で「青木繁展」をみていた.
今年も館林美術館にいってみた.「夢の中の自然-昭和初期のシュルレアリスムから現代の絵画へ-」

2部構成で,1部が昭和初期のシュルレアリスム作品,2部が現代の5作家の作品.
昭和初期のシュルレアリスム作品には初めて名前を見るような作家も多かった.なんとなく,シュルレアリスムという共通の味がするのがおもしろい.
現代の作家のなかでは平町公の作品がおもしろかった.作品は2点.出品リストに寸法が出ているので書いておく.
「吹き割れの滝図」 204x4119[cm]
「三段峡図第2部」 207x4074[cm]
つまり,幅40メートルの作品が展示室の4辺の壁をおおっているのだ.作者の平町公のアーティスト・トークが10/14にあるので行ってみたいなあ.
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携帯を機種変更した.
壊れたわけではないのだが,クーポンで割引できるからと勧められての買い替えだ.
前の機種は4年9ヶ月使っていたらしい.
で,今度の携帯にはカメラがついているので早速使ってみた.

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September 11, 2006
安彦良和氏は,「勇者ライディーン」,「コンバトラーV」,「ガンダム」などのアニメーションのキャラクターデザイン・作画監督を務め,後に漫画家に転身,現在は「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」を連載中という人だ.

ぼくは最初のガンダム(いわゆるファースト)の洗礼をうけた世代,いわゆる戦中派だ.ガンダムは大好きで,安彦良和の漫画版ガンダム「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」も楽しんでいる.
この展覧会もガンダムの原画を見にいくという軽い気持ちで見にいって驚いた.いやあ,絵がうまいのなんの.
ポスターがすごい.うまい.そして,動きのある絵がまたイイ.色彩に関しても傑出したものを感じる.
ほとんど知らなかったのだが,結構たくさん漫画を描いている.
さっそくアマゾンで「王道の狗」(全4巻)を購入して読んでみた.時代は明治,日清戦争開戦にいたる経緯を北海道で脱獄しアイヌになりすました主人公の目で追っていくという物語.史実の迫力はあるが,ちょっと感情移入しにくいかな.絵はとにかくうまい.特に群集シーン.群集までいかなくとも,数人の人物を配するコマからして絵になっている.
さて,昨年の「ガンダム展」,今年の「安彦良和展」とくれば,来年は「大河原邦男展」がみたいなあ.
(大河原邦男氏はガンダムをデザインした人です.)
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September 10, 2006
月に一度はブリヂストン美術館.なつの常設展示は9/18まで.
そのあとは企画展「プリズム:オーストラリア現代美術展」(10/7~12/3)なので,セザンヌのサントビクトワール山やモネの睡蓮,マティスの縞ジャケットや青い胴着の女,ピカソのサルタンバンク,藤田に佐伯にザオ・ウーキーはしばらく見ることができないかもしれない.ちょっと淋しいなあ.

(↑展示目録)
展示目録の表紙はポール・シニャック「コンカルノー港」.
若い頃はポール・シニャックってあまり好きではなかったのだが,いつの間にやら好きになっていた.
国立西洋美術館にはシニャックの大きな作品がある.ブリヂストンの「コンカルノー港」はあまり大きな作品ではないが,イイ.額もイイ.今期の展示では主役の位置に展示されているので一層カッコよくみえる.また,振り向くとピート・モンドリアンというのもイイ演出だ.
ブリヂストン美術館は額をうまく見せていると感じる.絵と一緒に思い出せる額があるんだよな.
藤田の作品の白い額や,青木の作品のちょっと荒れた感じの額.ジョルジェット嬢の額はいかにもって感じだし,サントビクトワール山の額はセザンヌが描いたかのように和合している.山口長男の「累形」は変わった額に入っていて,額も含めてオブジェのようだ.
ブリヂストン美術館は順路通りにまわると,第2室が最後になる.この部屋には大きな作品が展示されるので楽しみにしている.今回はザオ・ウーキー.正面に3点.ドン,ドン,ドンと.
全ての作品というわけではないが,ザオ・ウーキーの作品は風景に見える.抽象画として色や形態のリズムを楽しんだり,風景に具象化して味わったりできるのがザオ・ウーキーの作品だと思っている.こういう作品を描けるってすごいことだよなあ.
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June 01, 2006
ブリヂストン美術館で開催中の石橋財団50周年記念「雪舟からポロックまで」にいってきた.

お目当ては雪舟の「四季山水図」などの石橋美術館所蔵品だ.ブリヂストン美術館の所蔵品には馴染み深いものも多いが,石橋美術館の所蔵品を東京で見る機会はなかなかない.
休暇をとった平日に行ったのだが,盛況であった.
まず,石橋美術館の所蔵の日本画・書・磁器・茶道具が展示されている第2室から見学した.
雪舟,イイネ.
数年前,東京国立博物館で雪舟展が開催されたときに見にいったのだが,人が多いうえに照明も暗く,絵を味わう余裕はなかった.
ブリヂストン美術館の展示で驚いたのは,絵とガラスの間の空間が狭い.つまり絵を近くで見ることができる.
さらに,ブリヂストン美術館の全ての所蔵品について言えることだが,状態がすばらしい.
雪舟の「四季山水図」は昨年修復が終わったばかりで,修復の様子については「修復の現場から」と題した土曜講座のなかで講演があった.(拙ブログの記事)
修復された「四季山水図」はシワひとつなくパリッとしていて気持ちがいい.
「四季山水図」は絵の中に入って楽しむ絵だなと感じた.小さくなって絵の中に入るための装置が絵の下側(手前)から中央に向かってのびる細い道だ.たとえば「夏」の絵を見ると手前から道を登っていくと,ベンチで老師が休んでいる.鑑賞者もこのベンチで休む気分になる.すると,描かれた滝の音がサアーっと聞こえてくるような,谷の冷気が感じられるような,そんな気分になる.春・秋・冬の絵にも鑑賞者の休憩場所とそこへ至るための道が用意されている.
いわゆる南画には,このような箱庭のような作品が多いが,詰め込みすぎた作品だと鑑賞者の落ち着く場所がなかったりする.雪舟はイイ感じだ.
ブリヂストン美術館で最も好きな作品はセザンヌの「サントヴィクトワール山」だが,この絵はキャンバスの手前で山を眺めている気分になる.絵の中に入るような感じではない.遠くを見ている感じだな.雪舟は超広角レンズの画角でセザンヌは標準レンズの画角.
さて,第2室だが,雪舟以外もすばらしい.
高野切は紀貫之筆とされるもので,やはり修復を終えたばかり.とてもきれいだ.
伊勢集断簡 石山切は料紙が美しい.これも800年経っているとは思えないほどパリッとしている.
因陀羅の作品(国宝)は床間を模した展示.今回の企画展は展示も工夫されている.床間には龍泉窯の青磁花瓶.この花瓶とは別に同じく龍泉窯の飛青磁花瓶もある.飛青磁は東洋陶磁美術館のものには及ばないが美しい.現在,東京国立博物館の特別展示室で馬蝗班ほか数点の青磁が展示されている.青磁に縁があるなあ.
第2室以外の展示についても軽く記録しておこう.青木繁の海の幸,わだつみのいろこの宮をまた見ることができた.佐伯祐三の3作品も嬉しい.第10室には記憶にない作品が多かった.アンリ・ミショー,ジャクソン・ポロック,ザオ・ウーキーがおもしろい.
今回の展示は石橋財団50周年記念ということで,ブリヂストン美術館・石橋美術館の名品展となっている.そのためだと思うが,出品目録にはエントランスや階段にある作品までが載せられている.階段にあるマイヨールのレリーフは大好きなので,いつも階段で降りることにしている.出品目録に出ているとなんか嬉しいな.
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May 23, 2006
寝台急行「銀河」は4/27の7:18に大阪駅に着いた.中ノ島近辺を少し散歩してから大山崎山荘美術館に向かった.昨年はJR京都線で山崎駅まで行ったのだが,今年は阪急京都線で大山崎駅に行った.まあ,たいした違いがあるわけではない..(昨年の大山崎山荘の記事)

大山崎山荘美術館は新緑がきれいだった.庭園には小学生が遠足に来ていた.
大山崎山荘美術館では,開館10周年特別企画として「大山崎山荘の10年」という展示をしていた.
リーチの大皿,濱田のマグカップなどが良かった.昨年は気がつかなかったが喫茶室の入り口にある温度計・湿度計つきの時計がなかなか面白い.今年はオルゴールも聴くことが出来た.

喫茶室のバルコニーで去年と同じ熟撰を味わう.昼間からビールが飲める幸せ.
安藤忠雄設計の「地中の宝石箱」ではモネの大きな睡蓮が5点展示されていた.椅子にすわって眺めると窓のようだ.絵画の展示は少ないが,いつまででも見ていたくなる作品・環境だ.
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February 21, 2006
久々に東京国立近代美術館にいってきた.企画展は「須田国太郎展」.
須田国太郎と言われてもピンとこなかったのだが,「法隆寺塔婆」,「犬」,「海亀」などは見覚えのある絵だった.それなりに時間をかけて楽しむことができた展覧会ではあったが,これといって気に入った作品はなかったのが残念だ.どの絵も凡庸に見えた.須田国太郎は「ナンバーワン」も「オンリーワン」も目指さなかった画家ではないだろうか.
須田国太郎の年譜をみると,ぼくの好きな洋画家と時代が重なるので列記してみる.
須田国太郎 1891-1961
青木繁 1882-1911
藤田嗣治 1886-1968
佐伯祐三 1898-1929
青木繁・佐伯祐三の作品は,昨年まとめて見る機会に恵まれた.今年は藤田の個展を見ることができる.青木,佐伯の作品からは若いエネルギーが感じられる.また藤田の写実力や線の美しさ,絹のような白には感動する.須田には天賦の才も若いエネルギーも感じられなかった.
ただ好きなように絵を描いていたのではないだろうか.誰の評価を期待するでもない(ようにみえる)作風には自然と品格が備わったように感じられた.作品はともかく,そういう生き方は支持したい.絶筆の「西瓜とメロン」は絵が好きでなければ描けない絵だと思う.
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January 06, 2006
5日は仕事始めだったが,早めに会社を出て八王子市夢美術館にいった.この美術館は午後7時まで開いているので少し早めに会社をでると観覧できる.企画展はホルスト・ヤンセン展.
かなり刺激的で,いろいろ書きたい気持ちがあるのだが,うまく整理がつかない.
とりあえず,美術館で見た順番に思い出して,感想を列記してみようと思う.
まずは,ホルスト・ヤンセンの略歴を写しておく.
『1929年 ハンブルクに生まれる 1995年 オルデンブルクにて死去
デッサン(素描)と各種の版画を手がけ、暗い画面にデフォルメ(変形)された自画像、人体、生物、風景を緻密に描く。諧謔的でエロティックな表現に特色がある。浮世絵の影響も強く、とくに葛飾北斎に傾倒し、北斎にならい自らを画狂人と称した。』(チラシから)
では,出品リストを頼りに記憶をたどっていこう.
第1室
人体をモチーフとした鉛筆画・銅版画に惹かれた.デフォルメされた人体.手足が細く,顔や性器が強調された人体はホムンクルスの人形を連想させる.(思い出すままホムンクルスの人形と書いてしまったが,検索してみると期待するものがあまり見られなかった.身体の感覚と運動を脳の部位に割り当てたものだが,ペンフィールドのホムンクルスというらしい.教科書にも出ていたと思ったのだが・・・)そして,それら緻密に描かれた鉛筆画が実にうまい.技術的にうまい.だから,なにか実在するものを自動的に記録したような(念写したような)迫力がある.作家の思考に関係なく,脳が手を使って描いたような絵だ.
第2室
静物画は写実的でとてもうまい.フリージアやアマリリスなどの花瓶に生けた花を写生している.細い線を幾重にもひいて陰影をつけている.枯れた花や死んだ小鳥.静物を描くヤンセンはとてもクールだ.
第3室
自画像ばかりがたくさん並ぶ.ヤンセンに憑いているモノが自画像を描いているような印象.特に若い頃の作品は怖い.年をとって,だんだん人間になってくる.
第4室
年をとって,普通にうまい画家になった.80年代(50歳)の作品にはノンフィクションのリアリティが感じられない.本の挿絵や画集があったが,まさに作られた話の世界を描いたものという感じだ.絵としては味わい深いものばかりなのだが,実在の世界を写したような迫力がない.
通路・第5室
北斎の作品に影響を受けたということで,対比されたり,北斎漫画が参考に展示されていた.この展示の副題は「北斎へのまなざし」となっている.(北斎との対比はあまり重要ではないと感じた.)
この展示は埼玉県立近代美術館へ巡回するようなので,また見に行こうかと思っている.
ところで・・・
八王子市夢美術館は小さい美術館だが応援したい.
次回は「夢二の夢 展」(2/3-3/26).着物で来館割引やギャラリートーク,コンサート,お抹茶でひと息,託児サービスなど.総力戦だ.
(1/5)2
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September 23, 2005
佐伯祐三展にいってきた.場所は練馬区美術館.

佐伯祐三(1898-1928)は30歳で亡くなっている.その短い活動期間を,美術学校時代(~1923),第一次渡欧時代(1923~25),一時帰国した下落合時代(1926),第二次渡欧時代(1927~1928)の4つに分けて140点が展示されている.(年は適当.)
会場には佐伯が使った旅行かばんや,ライフマスクなどもあり,佐伯祐三という人物に焦点があっている感じだ.自分も作品をとおして佐伯祐三という画家のことを考えずにはいられなかった.
まず,美術学校時代の作品を見ると,印象派風の作品を描いている.ルノアール風の裸婦やセザンヌ風の静物があった.また,多くの自画像もあった.プライド高そうな感じだ.
フランスに渡って,その画風が変わってくる.暗い色調.また,顔のない自画像を描いたりしている.悩んだ時期があったかもしれない.絵具を塗り重ねたような作品には勢いがない.しかし,暗い空の色と地面の色が決まってくると,作品に勢いがでてくる.作品というより線に勢いがでてくるのだ.
佐伯は勢いのある線の美しさに自分のスタイルを見出したのかもしれない.上から下まで.または左から右端まで勢いのある線を描いている.佐伯の線は絵具の滑らかさを味わうかのようにひかれている.パレットナイフで厚く塗られた絵具に,少しだけ絵具をつけた筆で勢いよく線が引かれる.筆のあとがなんとも滑らかで美しい.広告の文字を書くことも,線の勢いに自分のスタイルを求めたからではないか.いや,筆を走らせること自体を楽しんでいたのかもしれない.
一時帰国の下落合の風景には,やはり,勢いが感じられない.パリにあった直線や文字が日本にはなかったのだ.停泊した船を描いた一連の作品をみると,佐伯が直線に渇望していたことが感じられる.船のロープだけではなく,テニスコートまで描いている.
また,気候の違いもあったのかもしれない.パリの作品にみられるような筆跡の輝くような滑らかさが,帰国時の作品にはみられない.なんか湿っぽい感じだ.
そして,佐伯は再びパリに行くのだが,もう,筆を走らせまくっている.街路樹を描いた作品があったが,線を描くために描いたような作品だ.またキュビスムを意識したように変形した扉や建物も描いている.当然,パリの町並み,広告を描いた作品も描いている.
おなじカフェテラスを描いた2枚の絵があった.面白いのは構図は変えているのだが,椅子や窓枠など,一筆で描くところは同じように一筆で描いている.
こういう画家が,40,50歳,いや80歳まで絵を描き続けたらどんな作品を残しただろう.「20代が絶頂期だったのだ」という声もあるかと思うが,やはり,早世した才能を惜しまずにはいられない.
(9/23)
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September 18, 2005

『海の幸』.ありえない光景だがなぜかこころひかれる.縦も横も奥行きも狭い.その中に10人もの男がいる迫力.担がれる鮫.こちらを向く白い顔.描きかけのように下書きの線が残っているのに未完成という感じがしない.力強く,完全な説得力を持つ.
なぜこの絵に魅せられるのだろうか.
『わだつみのいろこの宮』.トヨタマヒメの血管の透けて見えるような白い足.見開いた目と上気した頬.神話世界の美しさの中にも露骨な色気が漂う.題材は古事記の海幸彦・山幸彦の物語.海岸の『海の幸』に対して,海底の山幸彦を描いたのは偶然か?
『大穴牟知命』.やはり画面ぎりぎりに人物を配する.この迫力.つかみ出された乳房.そして画面の中から見つめる瞳の衝撃.
是非,また見たい作品ばかりだ.
ブリヂストン美術館では「特集展示 青木繁-《海の幸》100年」が公開中だ.(~10/10)
石橋美術館所蔵の上記の作品を東京で観ることができて本当にうれしい.
青木繁については拙blogに昨年のブリヂストン美術館土曜講座「1904年の青木繁」(講師:植野健造氏)の記事がある.(リンク)
また今回の展示に関連した土曜講座もあるので,聴講してみようと思う.これもまた楽しみ.
(9/18)
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September 08, 2005
熊谷守一美術館にいってきた.有楽町線の要町から徒歩10分ほどのところにある.
熊谷守一についてはなにも知らなかった.大原美術館で「陽の死んだ日」をみて,熊谷守一はどんな人だったのか興味が沸いたのだ.守一が40数年住んだ家のあとに熊谷守一美術館が建っている.豊島区ならすぐにいける.運がいいなあ.

「陽が死んだ日」は熊谷守一が死んだ息子の枕元で描いた作品だ.悲しみや怒りをカンバスにぶつける作家の姿が目に浮かぶようだ.しかし,その中にも絵のうまさがある.それがいっそう悲しい.『~画家は当時を回想して、「~”絵”を描いている自分に気がつき、嫌になって止めました」と語っている。』(「日本の美術館を楽しむ No.2 大原美術館」の山下裕二氏の記事より引用).味わい深い作品だ.
熊谷守一は1880年に岐阜県に生まれる.画家になると決意して上京し東京美術学校に入学するが,苦労したようだ.結婚したのは42歳のとき.次男 陽が死んだ翌年,次女 榧(かや)が生まれている.(榧さんが熊谷守一美術館の館主をされている.)写真や自画像の風貌からは仙人のような自由な印象をうけるが,実際,金持ちや役人が嫌いで,文化勲章も辞退したそうだ.いつのころからか線で輪郭を描き,塗りつぶす作風が定着し,晩年まで続いたそうだ.身近な蟻などもよく描いたそうで,美術館の壁にも蟻の絵がある.

美術館に展示されている作品は決して多いとは言えないが,バラエティに富んでおり,熊谷の画業を概観することができる.気に入ったのは,風に揺れる木と虹を描いた「風」や広げて干してある傘や脱いだ足袋を描いている「縁側」,「白猫」もイイ感じだ.墨絵の「蟻」も簡単に書かれているが特徴を捉えていてリアルだ.
美術館には展示室のほかに喫茶室”カフェ カヤ”がある.美術館の受付と喫茶室のレジは兼用になっていて,受付のお嬢さんが喫茶室もみている.常連さんとアットホームな雰囲気で話しているところに,お邪魔してアイスコーヒーをいただいた.2階は貸ギャラリーになっていて,金曜日にはデッサン会もあるようだ.
好きな美術館がまたひとつ増えた.
(9/3)
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August 26, 2005
夏休みを利用して倉敷にある大原美術館にいってきた.今回が初めての訪問だ.

大原美術館は国内の美術館を特集した記事などにはよく顔をだす美術館なので,ギリシャ建築風な本館の写真は目にすることがある.(上の写真参照) このような写真から,広い前庭の奥にどっしりと建っていると想像していたが,実際は門をくぐるとすぐ目の前にギリシャ風の本館は控えていた.ちなみに門の外には運河が流れている.この運河沿いの地域が美観地域になっている.

大原美術館はいくつかの建物で構成されている.
本館:西洋の近代・現代美術(印象派を中心とした画家・児島虎次郎のコレクション)
分館:日本の近代・現代美術
工芸館+東洋館:民芸+東洋古代美術
以下,それぞれの感想を記しておく.
<本館>
大原美術館の入館券は1日有効で,なんどでも出入りすることができる.本館には昼間に一度入館し,夕方,再訪した.昼間は観覧者がおおく,ゆっくり絵を見る気分になれなかった.観光地の中心にある美術館なので,美術に対する興味には関係なく,皆が足を向けるのだろう.さいわい土曜日は開館時間が延長されていたので,夕方の人の少ない時間にゆっくりと観てまわることができた.
最初の印象だが,絵画・建物(壁)ともに古いなあと感じた.額もちょっとくたびれた感じだ.
しかし,絵には面白いものがある.エル・グレコやゴーギャン,キリコは完成度が高く,イイ感じだ.マティスの作品も気に入った.
マティスの「マルグリット嬢の肖像」は,ブリヂストン美術館にある大好きな作品「縞ジャケット」と並べてみたくなる作品だ.縦長のカンバスに(おそらく)同じモデル(マルグリットなら娘)を描いている.
モネの「睡蓮」も好きな絵なのだが,ブリヂストン美術館の「睡蓮」のほうが好きかなあ.
本館は2階の連絡通路で新展示棟につながっている.こちらに現代美術が展示されている.熊にひっかかれたような切口のあるフォンタナの「空間概念」やジャクソン・ポロックの「カット・アウト」は近代美術館の痕跡展で見知った作品だが,倉敷で出会うとまた新鮮な感じだ.
サム・フランシスを集めた部屋もあるが,壁が汚く,興ざめ.
<別館>
ここは楽しい!
まず,青木繁.小品だし完成度も低いが,青木繁好きにはうれしい.
大きな部屋には,小出楢重,佐伯祐三,藤田嗣治など.好きな作家が多い.
なかでも佐伯祐三がカッコイイ.パリの街を描いた「広告”ヴェルダン”」.うまく言えないがカッコイイんだよな.異郷の地でうろたえていない.そして郷愁を感じることもなくカンバスに向かう画家の強さが感じられる.
もう一点,「陽の死んだ日」(熊谷守一).死んだ息子の枕元で描いた作品だ.悲しみや怒りをカンバスにぶつける作家の姿が目に浮かぶようだ.しかし,その中にも絵のうまさがある.それがいっそう悲しい.『~画家は当時を回想して、「~”絵”を描いている自分に気がつき、嫌になって止めました」と語っている。』(「日本の美術館を楽しむ No.2 大原美術館」の山下裕二氏の記事より引用).味わい深い作品だ.
別館の地下がまた楽しい.地下は現代美術の展示室で大きな作品,大きなオブジェが多数展示されていた.田嶋悦子の奇妙な花をモチーフにした大きなオブジェが気に入った.
<工芸館+東洋館>
いよいよ,工芸館+東洋館だ.工芸館と東洋館は展示室となる複数の倉から構成されており,倉ごとに特定作家の展示室になっている.それぞれの倉はひとつにつながっている.(下写真参照.)展示をプロデュースしたのは芹沢銈介.

展示されているのは,いわゆる民芸運動の中心になった作家の作品だ.こういう作品は倉の中で展示すると実にイイ感じだ.特に驚いたのは棟方志功.棟方志功の作品は,印刷物で見るとそれなりに味わい深いのだが,実物をみても,どこかそらぞらしい感じがして,あまり好きではなかった.しかし,この棟方志功を展示した倉はびっくりするくらいイイ感じだった.特に壁中央の目線よりかなり高い位置に展示した「門舞神板画柵(10枚組)」は壁全体を額にして収まっているようにみえる.作品も展示室になっている倉も同じような素朴なぬくもりを持ち,絶妙に馴染んでいる.棟方志功の作品は,こういう環境で見るのがベストかと思う.民芸というのはこういう感じを楽しむものかもしれない.これは得がたい快感だ.

今回の旅行では,大原美術館と倉敷市美術館が面白かった.そして,町並みを歩くのが楽しかった.
倉敷の美観地域は日中は観光地という感じでざわついているが,夕暮れ時にはグッといいムードになる.
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August 15, 2005
月曜日に開館している美術館は限られている.すぐに思いつくのは,Bunkamuraか六本木ヒルズだ.「モロー展」も「フィリップス・コレクション」もまだ見ていない.今日は家からの乗り換えの少ないBunkamuraに行ってきた.
下書き・習作がほとんどで,期待していた高密度な作品は少なかった.習作などを見ていて「イラストに近いな」という印象を受けた.(イラストと絵画の違いはなんだ?→調べてみた.イラストレーション:挿絵・図解.絵画:特に、芸術作品としての絵。画。(広辞苑より)ということらしい.なるほどなあ.)
<注目の一点>
サロメを題材にした「出現」がカッコイイ.
この作品は未完成だったが,晩年,背景に装飾的なディテールを線描したそうだ.それが,幻想的な効果を生み出している.

物語を妄想してみた.
「体を失った暗黒皇帝ヨハネは死んではいなかった.
そして最後の魔力で時間を戻して,太古の文明を復活させようとする.
廃墟の中に,邪神を祭った宮殿が出現し始める.
封印された力が解き放たれ,邪悪が再び世界を支配するのか.
超能力少女サロメはヨハネに最後の対決を挑む!」(なんてね.)
「出現」という題は,”首の出現”だろう.しかし絵をみていると”宮殿の出現”に思えてくる.
(8/15)
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July 26, 2005

ヴァンジ彫刻庭園美術館に続いて,ビュフェ美術館へ.
場所が離れているので巡回バスも出ていたが,徒歩15分なら歩いていくことにした.途中は上りだが,景色の気持ちよさに疲れを感じる間もなくビュフェ美術館についた.(途中,オニユリが群生していた!)
ベルナール・ビュフェ(1928-1999)は黒い直線が印象的な画家だ.ビュフェ美術館はその個人美術館で,ビュフェの作品を2000点収蔵している.損保ジャパン東郷青児美術館で開催中の「ベルナール・ビュフェ展」はここの所蔵作品で構成されている.
「純粋さを求めて」と題してビュフェ銅版画展をやっていた.ドライポイントはビュフェ作風に合っている.どの絵も個性的でイイ感じだ.
また,常設展の油彩もあった.ビュフェの油絵は強烈だ.自然光を取り入れた明るい展示室でビュフェの作品だけを眺めることができるのは幸せだった.ビュフェの作品は陰鬱な印象のものも多いので,照明を暗くした展示室で他の作家の作品と並べられるとネガティブな感情を持ったかもしれない.
最期は自殺により人生の幕を自ら引いてしまったビュフェだが,好印象をもって美術館をでることができた.

美術館をでたところにカフェがある.屋外のテーブルに席をとり,ケーキとコーヒーを楽しんでいると,離れたテーブルで店員が話をしていた.
「~今年はまだ残っていますね.ここだけなんですよ.白い紫陽花はアナベルという種類です.ビュフェの奥さんの名前がアナベルです.」
白い紫陽花”アナベル”がまだ咲いていた.そういえば,白い紫陽花を描いた作品もあったなあと,白い紫陽花の絵や奥さんを描いた絵などを思い出し,いっそうビュフェに好感を持った.
(7/24)
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July 24, 2005

ピカソの版画作品を前にして,ぼくの魂は激しくふるえた.
魂だけではない,体ごと激しく・・・
7月23日16時35分.千葉県北西部地下75kmを震源とするマグニチュード6.0の地震は,ブリヂストン美術館で企画展「絵のなかのふたり」を観ていた人々の魂をも震度5の感動(?)で揺さぶったのだった.
一瞬の沈黙.警備員さんは絵のチェック.そして館内放送.結局,そのまま鑑賞を続けることができた.
今回の展示もおもしろかった.とにかく多彩な作家・作品構成だ.ほとんどの作品はブリヂストン美術館の所蔵品だが,他館から大きな作品を借りているのでとても新鮮な感じだ.
雲愛嘔(Ay-O:雲愛で一字)の「アダムとイブ」とボテロの「アダムとイブ」が並べられていたり,ピカソと安井曾太郎の「画家とモデル」が並べられていたりと話のネタにも事欠かないので二人で見るのもいいかも.
企画展示のほかにも常設展示がある.セザンヌの「サント・ヴィクトワール山」の正面に椅子が!どっかと座って絵をみると,気分はエクス・アン・プロヴァンス!(行ったことは無いけれど・・・)
(7/23)
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July 22, 2005
「フェルメール・オフ」というオフ会に参加させていただいた.(はじめてのオフ会だ!) ネットでは馴染みの方も,実際会うのは初めてで緊張しまくりだった.さらに,「おけはざまです.」と名乗る恥ずかしさ.
オフ会は西洋美術館で待ち合わせ,ドレスデン展を鑑賞してから懇親会へというスケジュール.
ということで,本展示は緊張のうちに観覧したのだった.
前半の理化学機器も興味深かった.絵画では「窓辺で手紙を読む若い女」(フェルメール)と「ガニュメデスの誘拐」(レンブラント)に重点を置いた.
フェルメールは細部のディテールがイイ感じだ.1/2くらいに縮小しているかのような繊細なディテール感だ.手紙を広げる手の感じなんか好きだなあ.
<注目の一点>
今回は,「ガニュメデスの誘拐」(レンブラント 1635)に注目してみた.
ガニュメデスの誘拐は鷲に誘拐されるガニュメデスを描いたもので,赤ん坊のガニュメデスはおしっこを漏らしている.ガニュメデスの表情もいいが,おしっこの漏らしっぷりもイイ.高くあげたボトルからグラスに注ぐような放尿(失禁?)だ.
どのような物語なのか調べてみた.
「ガニュメーデースをその美貌ゆえにゼウスが鷲を用いて掠い,天上で神々の酒注ぎとした.」(「ギリシャ神話」 アポロドーロス 高津春繁訳 岩波文庫 P.152)
なるほど,天上で神々に酒を給することになるガニュメデスの運命を,酒を注ぐがごときおしっこが暗示していたのかと納得した次第だ.
レンブラントは結構おもしろい人だったのかもしれない.
<懇親会>

美術談義の饗宴.みなさん気さくなイイ方々でした.
(7/16)
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June 26, 2005

植物画世界の至宝展をみてきた.場所は芸大美術館.
内容は植物画(ボタニカル・イラストレーション)の500年の大系を紹介する全5章の構成になっていた.
第1章:近代植物画の誕生 (16~17世紀)
第2章:大航海時代と植物画の黄金時代 (18世紀)
第3章:”植物画”-ジャンルとしての確立 (19世紀)
第4章:植物画の衰退と伝統の継承 (19~20世紀)
第5章:植物画のルネッサンス (現代の作家)
先日,ブリヂストン美術館の土曜講座で,フランス文学のロマン派の解説で「第1世代はパワーがあり,第2世代は小品が多くなり,第3世代は消費的・オタク的になる.」という話を聞いて面白いと思った.どんなジャンルにも同じようなことはあるもので,植物画の世界もいっしょだなと感じた.
第2章がパワーのある植物画の第1世代で,第3章,第4章は小品の多い第2世代,第5章はオタク的な第3世代だと思う.
面白かったのは第2章と第5章だ.(第1章も良かったが少ない.ボタニカル・イラストレーション以前という感じだ.)
第2章ではウイリアム・フッカーとオーガスタ・イネス・ウィザースの作品が多数展示されているが,これが絶頂期と感じた.ウィザースの「ハナスグリ」や「ブドウ」,フッカーの「メロン」などが気に入った.
第3章で手法・形式が模倣されているような気がしてくる.そして第4章では見事に衰退する.写真の登場により記録としての必要性がなくなったことに起因するようだ.
第5章では現代の作家の作品が展示されているが,ここでボタニカル・イラストレーションは植物の記録という目的ではなく作家の表現手段として息を吹き返したように感じた.
たとえば「きのこ」(アレクサンドル・ヴィアズメンスキー)は,採ってきたばかりのキノコをスキャナでとりこんだように散らばった土やコケが描かれている.だまし絵的な作品だ.
「コチョウラン」(ケイト・ネスラー)も植物の記録ではなく,根(茎?)の絡み合う様子を描きたかった作品に見える.
白い背景にリアルな植物を描くとボタニカル・イラストレーションになるようだが,先日見た小林古径の植物画などと比べてみても面白い.
ちょうど東京国立博物館では特集陳列「動物図譜」を展示している.日本のズーロジカル・イラストレーションと見比べるのも楽しい.この特集陳列では応挙の虫の写生帖がかっこよかった.
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今週もブリヂストン美術館の土曜講座だ.「ユイスマンスとギュスターブ・モロー」と題して鹿島茂氏が講演された.
近々,ギュスターブ・モロー展がある.とても楽しみな展覧会だ.その予習も兼ねて聴講してきた.ユイスマンスについては聞いたことも無い.無学だなあ.
内容をまとめておく.
ユイスマンス(1848-1907)はフランスの文学者とのこと.
フランス文学を語るときには世代論になるそうだ.この場合,世代とはナポレオン(1769-1821)とのかかわりになる.
バルザック,ユゴー,リュマ:ロマン派 第1世代 ペンでナポレオンを目指す勢いがある.
ミュッセ,ゴーチェ:ロマン派 第2世代 パワーが無い小品がおおい.
ボードレール,フローベル:ロマン派 第3世代 自我が薄れ,自己批判的になってくる.
ゾラ,モーパッサン,ユイスマンス:自然主義
(ちなみにモロー(1826-1898)はロマン派 第3世代に影響を受けた世代に属する.)
ユイスマンスは下層中産階級の生れで,役人になった後に,小説を書いたそうだ.
「さかしま」(1884)という小説が反響を呼んだ.ユイスマンスの小説はストーリーは単純で,細部の描写がくどいのが特徴らしい.
「さかしま」の主人公デ・ゼッサントは,他人とさかしま(さかさま)のことをする.昼夜を逆にしてみたり,浣腸で栄養を摂取したり.そのゼッサントは絵画や本のオタク・引きこもり状態でいるらしい.
ここで,面白い話があった.
ゼッサントは3代目的,消費的,オタク的だ.という話なのだが,うまく書けるかな・・・.
「すべてのものは書かれて(描かれて)しまった」と考え,(新しいものを生み出すのではなく)選択し組合せて別の価値体系を作る.言い換えれば選択・組合せ・翻訳をおこなう.これは3代目的,消費的,オタク的だというのだ.
なるほど,確かにどんなジャンルでも第3世代ともなると既存のものを組合わせて形にしているような気がする.
で,ゼッサントの選択はというと,すべてのジャンルの爛熟期を好むそうだ.文学ではフローベルよりボードレール,さらにマラルメを評価する.そして絵画ではギュスターブ・モローだ.
「さかしま」(澁澤訳)の「サロメ」(モロー)について書かれた部分を朗読してくれた.この部分は絵画を物語のように読んでいく感じで妖しい.妄想爆発している感じだ.
モローの作品は歴史画であるが歴史のみを描いたのではない.具象画であって抽象画であり,なんも抽象・象徴なのかわからない.そういうところが文学者をひきつけ,評価された.
ユイスマンスも細部をクドク描いた作家だが,モローも細部の描き込みに際限がなかった.すべての古いものを集めて描く.19世紀的なプラスの美学だ.20世紀にはマイナスの美学が起こってくる.
ユイスマンスの晩年は神秘主義からキリスト教徒になった.熱心すぎて異端扱いもされるがキリスト教徒として死んだらしい.
モローはアカデミーの先生となってルドン,マティスを教えた.
面白い話だったのが,うまくまとめられていないのが悲しい.
「さかしま」はAmazonで注文してみた.面白いかな.
(6/25)
-追記-
リンクが貼れるようになりました.
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June 19, 2005
一枚のチラシに触発され展覧会に足を運ぶことがある.「6月のイギリス」という題に誘われて栃木県立美術館に行ってきた.副題は「ホーガスからホックニーまで イギリス美術の250年」.
展示作品は個人蔵の一点を除いて館蔵品だ.ギャラリートークを立ち聞きしたところによると,栃木県立美術館は濱田庄司(益子)→バーナード・リーチ→イギリスという関係でイギリス関係の作品を収集するようになったそうだ.
今回はゆるゆると見学したのであまり書くことが無いのだが,なんとなくイギリスを感じられたような気がする.
今回,面白かった一点は「英国大使館の昼食」(デイヴィッド・ホックニー)だ.英国大使館での昼食風景を着席した状態で部屋中を自由に撮影して,その写真を張り合わせて室内全部を表現している.ホックニーの作品は他にもあった.「島」もイイ感じだった.
常設展もイイ感じだ.小杉放庵,川端龍子など.
(6/18)
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June 12, 2005
ブリヂストン美術館の土曜講座を聴講した.「絵画×文学:作家たちの交流とその影響」という全5回の講座の第1回目.「シュルレアリスムの時代」と題した講座で,講師は巖谷國士氏.
シュルレアリムについてはいくつかの作品を目にしたことがあるという程度の経験と知識しかない.しかし,興味はあるのだ.講座の内容をまとめておく.
シュールレアリスムは20世紀初めに起こった.背景には,第一次世界大戦(WWI)により合理主義への信頼が崩れたこと,学問の発展により世界観が変わったことなどがあるらしい.つまり,印象派を生んだベル・エポックと呼ばれる時代は,西洋中心主義・白人主義を正義としたが,WWIによりその合理主義の信頼が崩れた.また,相対性理論や非ユークリッド幾何学,心理学(深層心理の発見)などの学問の発展により,世界観が変わったのだという.
そこに「現実とはそう思わされているに過ぎない」という考え方がおこった.それまでの「現実」をどう乗り越えるかというのがシュルレアリスムだ.シュルレアリスムは超現実と訳されたが”強い現実”という感じの意味だそうだ.
シュルレアリスムは新しい表現方法としてオブジェとコラージュを生み出した.
アンドレ・ブルトンは眠りに入る前に「窓ガラスで2つに切られた男がいる」という声を聞いた.その自然発生的なイメージが面白いと感じたそうだ.そこで自動記述という実験をおこなった.とにかく猛スピードで書くという実験だ.この実験で速度の違いで内容が変わることがわかった.速度が遅いと過去形で書かれることが多く,速度が速いと動詞がなくなったそうだ.ブルトンは主観から客観への変化と考えた.そこで関係の無い新聞見出しを組み合わせたコラージュを作成したりしたそうだ.
講座のテーマである「絵画×文学:作家たちの交流とその影響」については越境的という言葉で説明された.シュルレアリムは現実に立ち向かう生き方だから,専門分野に関して越境的で,画家が詩を書き,詩人が絵を描くことも不思議ではない.マン・レイのオブジェや,エルンストの詩などもスライドで紹介してくれた.
そして,いろいろな作品のスライドをみながら解説を聞いた.
ブリヂストン美術館のピカソのコラージュ(パピエ・コレ=貼り絵)「JOURNAL」はブルトンの所蔵品だったそうだ.
マックス・エルンストの作品を多数紹介してくれた.この人は半分鳥らしい.作品にでてくる鳥はロプロプというエルンストの分身だそうだ.エルンストのコラージュは”自分がでていない”.また「糊が違う.時間が経っても剥がれない.」というのには笑った.
キリコやマン・レイの作品も紹介された.マン・レイの「アングルのヴァイオリン」は見たことがあった作品だ.
巖谷先生は,古賀春江と瀧口修造も紹介された.古賀春江に対しては”弱い”と厳しい.そして瀧口を日本唯一のシュルレアリストといった.
シュルレアリスムの作品,特にマックス・エルンストの作品が見たくなった.
(6/11)
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May 09, 2005

損保ジャパン東郷青児美術館で「魅惑の17-19世紀フランス絵画展」をみた.
「クールベ美術館展」(三鷹市ギャラリー),「ヨーロッパ絵画名作展」(うらわ美術館)とみたのだが,あまり日をあけずに損保ジャパンに行ったのは失敗だった気がしてならない.フランス絵画が大好きというわけではないのだが,まとめて見るとなんか面白いかな,と思ったのだ.しかし実際は,ちょっと見飽きてしまった.損保ジャパンの展示作品は三鷹市ギャラリー,うらわ美術館より良いものが多かったと思う.しかしあまり新鮮に,そして真剣に見られなかったのは残念だ.(飽きっぽいだけかもしれない.)
作品は17世紀から19世紀まで時代順に展示されている.「ヨーロッパ絵画名作展」(うらわ美術館)を見た後にフランス史は整理したから,時代背景は把握できてたと思う.
まず,17世紀の歴史画(というらしい)が展示されている.神話や聖書に題をとった絵画は荘厳で美しい,のだが,なぜかあまりグッとこなかった.この時代にはアカデミーという制度があり,国が画家を育成していたらしい.
そして18世紀を経て,フランス革命以降の作品が展示されていくのだが,画題もさることながら,額が地味になってくる.17・18世紀の展示室は金ピカの荘厳な額が並んでいるが,19世紀になると明らかに地味になってくる.王室・貴族だけのものだった絵画をブルジョワ市民も味わうようになってきたことがわかる.
目玉の展示は「こんにちはクールベさん」だ.大きいが丁寧に描かれているし,画題も新鮮で見ごたえがある.
ドラクロアの「アルジェの女たち」があった.ルーブルの「アルジェの女たち」と同じ構図だが背景に通路はなく,女たちは壁を背にしている.幻想的でイイ絵だ.
通しでみるとフランス絵画史を概観できるイイ展示だと思う.特定の画家の展示では,その画業・人生がわかり,その中で作品の良し悪し(好き嫌い)を味わうことが出来るが,このような展示だと,歴史の中で絵画がどのように扱われてきたか,歴史の中での画家と作品を感じることが出来る.
クールベやバルビゾン派の作品など19世紀のフランス絵画を短期間にいろいろ見てみたが,作品が描かれた時代背景を無視するのはあまりフェアじゃないかもしれないと思うようになった.いままでは美術ドシロウトの絵画鑑賞は好き・嫌いで十分だと思っていたのだが・・・. バルビゾン派の陰鬱な森はあまり好きではないが,戦争・革命などその時代背景を思うと,郊外の景色を描いた画家の心情に興味が沸いてくる.
「こんにちはクールベさん」はクールベとパトロンのブリュイアスの出会いを描いた作品だが,味わい深いな.王侯貴族が絵を買ってくれる時代が終わったことがよくわかる.
(2005 5/7)
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May 05, 2005

遠出して混んでいるのも嫌なので,近いところに行ってみた.フルクサス展以来の再訪となるうらわ美術館だ.企画展は「山寺 後藤美術館所蔵 ヨーロッパ絵画名作展 -宮廷絵画からバルビゾン派へ-」.GWだし,それなりに混んでいると思っていたのだが,心配になるほどガラガラだった.
展示の内容は3部構成で,I.宮廷絵画からアカデミスムへ,II.バルビゾン派とその周辺,III.ヨーロッパ諸国の絵画 となっている.
作品の印象だが,「バルビゾン派の色使いは重いなあ」と感じた.特に森.フォンテーヌブローの森はこんな感じなのだろうか?それとも宮廷絵画や印象派の作品と比較して重く,暗いと思っているだけか.クールベの波やドーミエの川辺を描いた作品などは大きく見ごたえあった.しかし,なんとなく主役不在というか,いつまでも見ていたいというような絵はなかった.
19世紀フランスに興味が出てきたので,年表を作ってみる.(会場にあった年表が良く出来ていた.図録に載っていたので買えばよかった.それに世界史まじめに勉強しとけばよかった・・・)
<フランスの同時代の画家など>
アングル(1780-1867)古典主義
ドラクロア(1798-1863)古典主義
コロー (1796-1875)バルビゾン派
ドーミエ (1808-1879)バルビゾン派
テオドール・ルソー(1812-1867)バルビゾン派
ミレー (1814-1875)バルビゾン派
クールベ (1819-1877)レアリスム
マネ (1832-1883)印象派
セザンヌ(1839-1906)印象派
ロダン (1840-1917)
ガレ (1846-1904)アールヌーボー
ミュシャ(1860-1939)アールヌーボー
ちなみにフランス以外では
ゴッホ(1853-1890)
河鍋暁斎(1831-1889)
<フランス史>
1789:フランス人権宣言(フランス革命)
1792:オーストリアに宣戦
1792:共和制樹立
1793:ルイ16世処刑
1798:ナポレオン,エジプト遠征
1799:ナポレオン,クーデター.臨時統領政府.
1800:オーストリアとの戦争再開
1801:オーストリアと講和
1802:イギリスと和約.ナポレオン終身統領.
1804:ナポレオン皇帝
1805:トラファルガーの海戦敗北.ナポレオンの英侵攻挫折
1805:アウステルリッツの戦い.ナポレオン,オーストリア・ロシア連合撃破
1806:ライン同盟
1806:ベルリン勅令.対英国,大陸封鎖令
1812:ロシア,イギリスと貿易再開.大陸軍,ロシア侵攻.モスクワ占領.撤退.
1813:新同盟軍がフランス撃破(諸国民の戦い)
1814:同盟軍,パリ入城.
1814:ウイーン会議 フランス・ロシア・プロイセン・オーストリア「会議は踊る,されど進まず」
1815:ウイーン議定書 ブルボン家が復位(ルイ18世,反動的政治)
1815:ナポレオン再び帝位に「百日天下」.ベルギーで英・普に敗戦.セントヘレナ島に幽閉.
1824:シャルル10世即位.反動的政治&アルジェリア出兵
1830:七月革命
(フランスでは産業革命が進み,労働運動や社会主義運動が起こった.有権者は1%弱.ブルジョワジー支配に対する国民の不満増大)
1848:選挙法改正運動→二月革命
1851:万国博覧会(ロンドン),ルイ=ナポレオン皇帝
1853:クリミア戦争.エルサレムの管理権をめぐってロシア・オスマンが開戦.フランス・イギリスも出兵.
1855:パリ万博.ブルジョワ.ガス灯.
1867:パリ万博
1870:議会帝政.普仏戦争(~71)惨敗,アルザス・ロレーヌ割譲.
1871:パリコミューン(ベルサイユでの講和条約に反対)
1875:第三共和制.ビスマルク外交により欧で孤立.ナショナリズム.
1878:パリ万博
1889:パリ万博(エッフェル塔)
1894:ドレフィス事件
図録に載ってた年表の方がわかりやすかったな.ケチらないで買っておけばよかった.
こうしてみると,フランスの19世紀は大変な時代だな.
(2005 5/5)
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April 30, 2005

今日からGWだ.先週,大型連休直前に休暇までとって京都・大阪に行ったので,GWはゆるゆる過ごす.
調べてみると,この時期にフランス絵画の展覧会が多い.もしかしてブーム?
「クールベ美術館展」(三鷹市美術ギャラリー 6/5まで)
「バルビゾン派版画展」(ニューオータニ美術館 5/15まで)
「魅惑の17-19世紀フランス絵画展」(損保ジャパン東郷青児美術館 7/15まで)
「ヨーロッパ絵画名作展」(うらわ美術館 6/26まで)
「ミレー、コローの版画」(村内美術館 7/31まで)
「ルーブル美術館展 -19世紀フランス絵画」(横浜美術館 7/18まで)
「フランス近代絵画展-印象派からエコール・ド・パリ」(松岡美術館 9/4まで)
(西洋美術館のラ・トゥールもフランスですね.)
バルビゾン派を中心にフランス風景画をまとめてみることも出来そうだ.
ということで,「クールベ美術館展」を見にいった.場所は三鷹市美術ギャラリー.三鷹駅前の商業ビルの5階が美術館になっている.「ぐるっとパス2005」に入場券があるのでタダで入れるのだ.
クールベの作品は,ブリヂストン美術館,山梨県立美術館で鹿の絵を見ている.が,はじめから好きな作家ではなくて,ブリヂストン美術館で何度もみているうちにだんだん興味が沸いてきた.
「クールベ美術館展」はクールベの生家を美術館としたクールベ美術館の収蔵品を展示している.
若い頃の「アルジェ太守の囚われ人」はロマン主義的レアリスムって感じの絵でイイ感じだ.額もおもしろい.子山羊を抱いた娘の絵なんかもカッコイイが,水車のある製紙工場を描いた絵なんか好きな雰囲気だ.板に白い絵具で輪郭を描いた漫画のような「聖職者会議」も味わい深い.ペン画や版画をみるとクールベの画力がよくわかる.そして大作「シヨン城」は見ごたえがある.印象派のような趣のある「日没」もおもしろかった.
三鷹市美術ギャラリーで東郷青児美術館のチラシをもらったのだが,やはり,東郷青児美術館のほうが作品のグレードが高そうだ.しかし,小さな美術館でゆっくり過ごす休日も悪くない.
(4/29)
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April 25, 2005

先週は京都・大阪にいってた.寝台急行「銀河」で終点の大阪までいき,そこから山崎,京都市内へと移動して,京都で2泊.帰りは大阪にいって中ノ島の美術館を見学するという旅行だった.写真現像の都合もあるので順番どおりではないが記録していく.
最初に行ったのがアサヒビール大山崎山荘美術館だ.大山崎山荘は,実業家 加賀正太郎によって大正初期から昭和初期に建てられたという.イギリスのチューダー様式をもとにしているそうだが,緑の中の山荘はとても美しかった.庭もすばらしい.天気もよかったので印象派の絵のなかにいるような感じだった.
館内も建造当時の雰囲気が残っている.まず目を引くのが大きな振子時計だ.18世紀のものでカレンダーが付いている.館内の展示品はアサヒビール初代社長の山本為三郎の陶器コレクションが中心になっている.河井寛治朗,濱田庄司,バーナード・リーチ,富本憲吉などの作品を観ることができた.自然にかざってあるように展示しているのがイイ感じだ.
段の奥行きのやや狭い階段で2階にあがる.当時の階段はこんな感じだったのか.その途中に牛で畑を耕す風景を描いたバルビゾン派の作品.2階にはバルコニーにでられる喫茶室がある.アサヒビール「熟撰」をのんだ.バルコニーからの景色も美しいが,景色のなかにこの山荘が無いのがさびしい.
「万緑の大山崎山荘、絵画コレクション展」をやっている.場所は新館「地中の宝石箱」だ.景観を損なわないように地中に作った展示室は安藤忠雄の設計で,地中につづく長い階段の正面はガラス張りになっていて庭園の緑が絵のように見えた.展示は印象派のもので,モネの睡蓮(1907年),ドガ,ルノアール,モジリアーニ.作品数は少ないが,ガッカリしない密度はあった.
天気がよければ大山崎山荘は絶対にオススメ.
(4/22)
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April 16, 2005
ゴッホ展をみた.先週の土曜日に美術館の前までいったのだが,入場を待つ人の多さに驚いた.やはりゴッホは人気がある.そこで,平日の出張帰りに行ってみた.
ゴッホというと,その人生の物語が思い浮かぶ.それが,友人のとの決裂,耳を切る狂気,そして拳銃自殺というものなので,作品を観るときに作者の心理をうかがうような視点になるような気がする.ゴッホの人生を作品に重ねて見るのもいいけど,それ抜きでも楽しめた.美しい作品が多い.ゆっくり観たかった.人が多すぎだ.
「夜のカフェテラス」もよかったが,「糸杉と星の見える道」が泣きたくなるほど美しかった.人が多すぎで不愉快な気分になっていたが,これを見てすべてOKになった.ちょっと感動した気がする.
(4/15)


「夜のカフェテラス」をリスペクト.「夜の京都国立博物館」.補色の関係ってヤツですか.
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April 05, 2005
「修復の現場から」という全5回の講座の5回目.講師は紙本保存修復家の坂本雅美氏.紙の”保存”と”活用”という対立する行為について説明してくれた.
第3回の講座で聞いた日本の紙の修復技術(装潢(そうこう)技術という.)は1000年の歴史があるという話だったが,西洋の紙の修復技術の歴史は浅い.体系的な紙の修復技術が作られたのは1966年以降だそうだ.1966年にフィレンツェでアルノ河の洪水があり,一晩にして文化財が水没するという被害があった.そのとき水没した300~400万冊の書籍を修復・保存した体験から,紙の修復・保存の体系が作られ,専門家が現れるようになり,大学の学科で教えられるようになったそうだ.
保存に関しては,石橋財団の収蔵庫を紹介してくれた.温度:22℃,湿度:RH55%.温度は低ければ低いほど化学変化が抑えられるのでいいのだが,人が入ること,展示するときの温度などを考慮して22℃にしている.また無灯にして光による劣化を防いでいる.人のアクセスを制限するのも重要なポイント.
活用(展示)環境は,24℃,55%(夏).22℃,55%(冬).光は照度50ルクス(展示期間:3ヶ月/年).50ルクスというのは作品をみる最低限度の明るさだが,虹彩の明るい西洋人が決めた規格ということ.非接触が原則だが,閲覧という接触可能な活用方法をとる美術館も海外にはある.ヴィクトリア・アルバート美術館を紹介してくれた.受付で閲覧したい作品を告げると,収蔵庫から出され,閲覧室で観ることができる.学童がテーブルで版画作品(?)を閲覧する画像などうらやましい限りだ.
紙の作品(版画など)は台マット,窓マットで構成されるマウントという台紙に挟み込まれて保存される.そのサンプルを回覧してくれた.軽いがハニカム構造なのでたわまない.作品は和紙ヒンジを介してメチルセルロースという弱い接着剤で台マットに止められている.
実際のレンブラントやピカソの版画作品の修復についても説明があった.レンブラント作品の話では”透かし”をいろいろな方法(透過光やX線など)で見る話が面白かった.透かしの入れ方を考えたことはなかったが,簾桁に針金で模様を作り,紙を漉くと,模様のところが薄くなり透かしになるそうだ.
紙の歴史についても概説してくれた.BC2頃,中国で発明され,7世紀に日本,14~15世紀にヨーロッパに伝わった.初め紙はラグ(ぼろ)を選別・切断・粉砕したものを原料にしていたが,コウゾやガンピを原料にする方法は日本で編み出したものらしい.レンブラントは簾の目がない和紙を好んだそうだ.
(4/2聴講,4/10記事)

土曜講座のあとに,「印象派と20世紀の巨匠たち」を見た.ギャラリー・トークに参加してみた.
ギリシャ神話をモチーフにしている作品解説からはじまったが,後半は少しテーマから逸れた気もする.
ジョージ・グロスの「プロムナード」を取り上げたのが面白かった.この作品は第一印象があまりよくなかったので真剣に見たことがなかった.「どのように感じますか?」と参加者に質問していたが,ぼくは「狭い,ぶつかる.」と思った.言われて気が付いたが歩道の奥行きや石畳の線もおかしい.注意して見ると,結構楽しめそうだ.第一印象で素通り決めるのはもったいないかも.
ふと隣をみると,国吉の「横たわる女」が掛かっていた.この対比が面白いと思った.作品に気をとられて解説を聞いてなかったのだが,ジョージ・グロスはドイツの人らしい.国吉はアメリカで絵を描いていた.(と思う.)場所は違うが,同じ時期に同じような色調で同じような人体の変形を試みているグロスと国吉.わざと並べて掛けてますよね.
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April 03, 2005
ラ・トゥール展をみた.
ラ・トゥールの作品の光と闇を見ていると,薄暗がりに目が慣れてくる感覚をおぼえた.これはラ・トゥールがアトリエの薄暗がりで感じた感覚だろう.そしてそれをカンバスに再現したのだ.電気のない時代に蝋燭の明かりでみたラ・トゥールの作品は現実のように見えたのではないだろうか.テレビや写真のない時代にリアルな世界をカンバスに描くのは最先端技術であったに違いない.”アート=技術”という時代だったのではないか.
江戸時代の金屏風は紙燭の灯りに幻想的な昼間の世界を現出させた.ラ・トゥールの作品は蝋燭を使ってリアルな暗がりを表現した.当時の人たちはどんな驚きをもってこれらの作品を見たのだろうか.
('05 3/27)
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February 28, 2005
先々週に行ったブリヂストン美術館の記事を今頃書いているのには理由がある.先週は宿泊出張があり忙しかったのと,出張先で風邪(インフルか?)をひいたからである.土日は家で寝ていたので記事のネタがない.そこで先週書きかけた記事を書いておこうというわけだ.さいわい今は”百薬の長”が効いている.
さて,ブリヂストン美術館だが,「印象派と20世紀の巨匠たち-モネ、ルノワールからピカソまで」という収蔵品を中心とした企画展をおこなっている.ちなみに昨年の収蔵品展は「マネ、モネ、ルノワールから20世紀へ- 巨匠たちのまなざし」だった.大作のラインナップは大差ないが,展示で作品の印象も異なる.今年の展示のほうが作品の配置が工夫されていたように感じる.ブリヂストン美術館はすばらしい.収蔵品でこんな企画展が出来るのだ.
気に入った作品に触れておく.
クールベの「雪の中を駆ける鹿」は,あまり好きな作品ではなかったのだが,何度も見ているうちにだんだん好きになってきた.理由はよくわからないが,この絵は近くで見るほうが納得がいく.
マネの自画像はお気に入りのひとつ.展示室に人がいないときは,左足を前に出し同じポーズをとってみる.
ルノワールのジョルジェット嬢は人気者なのでみんなが立ち止まって見る.今回のぼくは,ジョルジェット嬢の気分ではなかった.
モネの睡蓮もお気に入りだ.メガネをはずしてみると超リアル印象派絵画が味わえる.
セザンヌのサント=ヴィクトワール山はすごい.透明感のある青,筆のタッチも丁寧でカッコイイ.
ロダンの版画は学術書の挿絵のように精密だ.彫刻が好きになってきたのでロダンにも興味が沸いてきた.
マティス!今回は「縞ジャケット」にうっとり.この絵が主役になるような展示だと映える.
ピカソ版画集「ヴォラールのための連作」より.これが前期展示の目玉(?)か.後期はマティスの「ジャズ」になる.ヴォラールはピカソの作品を扱った画商だ.作品は昨年の「エロス展」に通じる.
ピカソの「ポールと子羊」はひろしま美術館からの借用.これがあるのでブリヂストン美術館の見慣れたピカソ作品がいっそう新鮮にみえる.「サルタンバンク」はやはりカッコイイ.
ルオーやローランサンの展示室の出口には藤田.右に「横たわる女と猫」,左に「裸婦と猫」.白と黒の対比が美しい.藤田の作品は近くで見るのが楽しいが,展示室中央の椅子にかけて観る.出口の向こうの壁にはザオ・ウーキーの青.
抽象絵画とシュールレアリスムの部屋を抜けると,完結した満足感を味わうことが出来た.まさに美の回廊といえる展示室を何度か回った.がもう1室残っている.日本の近代絵画だ.この部屋もひとつの展示としてまとまっている.安井曽太郎ってあまり好きではなかったのだが,最近だんだん好きになってきた.
ああ,また熱がでてきたみたいなので寝ます.
('05 2/25観覧 3/7記事)
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January 08, 2005
八王子市夢美術館は小さな美術館だ.しかし大きな美術館・博物館が名を連ねる「ぐるっとパス」の最後に入場券が綴られている.小さいながらも健気な活動を応援したくなる.開館一周年記念の「シャガール展」に行ってきた.
「シャガール展」といっても油絵の大作がズラッと並ぶわけではなく,3つの版画集と数点の油絵で構成されている.
3つの版画集は,「サーカス」(リトグラフ),「ポエム」(木版画),「寓話」(銅版画).「ポエム」にはシャガール自身の詩がついており,詩の訳文も展示されていた.「寓話」はラ・フォンテーヌの「寓話」につけた挿絵だ.やはり,物語の訳文が展示されていた.
シャガールの絵をみて感じるのは,写実的なこだわりがないなあ.ということだ.馬も人もバイオリンも乳房も記号のように画面に配置されている.彼の絵は詩のようだと思った.
油絵ばかりだと飽きたかもしれないが,版画集ということで楽しめた.
('05 1/7)
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December 12, 2004
岡本太郎記念館に初めていった.ぼくは岡本太郎の「今日の芸術」を読んだとき,その友達に語りかけるような文章に,まるで太郎さんが友達のように身近に感じられた.岡本太郎記念館は太郎さんの自宅を公開したものだ.友達の家に来たような感じだ.太郎さんがいるようなそんな気配が残っている.
館内は写真OKなので,展示室や庭で写真を撮る人がいた.カメラを持っていれば撮りたいところだが,当日はNHKホールに行くのでカメラを携行しなかった.残念.
記念館1階にはアトリエと客間,2階に展示室がある.彫刻の置かれた庭もおもしろい.
『憂愁』展をやっていた.(12/27まで) 戦後第一作の『憂愁』には印象的な詩がついている.
なんでみんな太郎さんのことが好きなのだろう.作品よりも人柄だろうと思う.いや人柄さえ作品かもしれない.この人のことをもっと知りたくなる.
(川崎市岡本太郎美術館にいき,岡本太郎記念館へは近いうちに再訪したい.庭は昼間がよさそうです.)
(12/11)
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December 04, 2004
ブリヂストン美術館でザオ・ウーキー展を観てきた.

『パリを舞台に活動を続け、近年その声価を高めている抽象画家ザオ・ウーキー(ZAO Wou-Ki、趙無極)は、1921年、北京で、宋王朝にまで遡ることができる名家に生まれました。1948年、27歳で渡仏し、1950年代半ばには抽象絵画に取り組むようになり、当時、フランスで大きな潮流となっていた「アンフォルメル(「不定形」の意)」の画家たちとの交流から大きな影響を受けます。そして鮮烈な色彩の巨大な油彩作品を数多く手がけると同時に、モノクロームの水墨画や版画にも取り組むなど、多彩な制作活動を展開してゆきます。1964年にフランスに帰化したザオ・ウーキーは、洋の東西の違いを越えて、絵画の本質を極めようと努めた画家であるといえるでしょう。(ブリヂストン美術館HPより)』
作品はほぼ制作年代順に展示されているので,ザオ・ウーキーの活動を概観できる.(おそらく)初めて作品をみる作家だが,結構好きになった.
50年代までの作品には,濃密な色彩の中に線刻のような描きこみが緊張感を与えていたが,それ以降の作品では意図的な形状の描きこみは影を潜める.そのかわりに偶然の刷毛目や絵具の飛沫がつくる鋭利なコントラストが画面を引き締めるようになる.この頃から作品名は日付となり,作者が”具体的なモチーフ”を持たずに制作をおこなっていることをうかがわせる.
80年代以降には,自然・偶然がつくりだす味わいを意図的に作品に取り入れているように感じた.その点で侘茶の茶器とおなじような趣を感じる.
作品「27.01.86」をみて海老満月を思い出した.ぼくの大好物だ.マティスやモネにささげた作品もあったので,ぼくはザオ・ウーキーに捧げてみる.

「ザオ・ウーキーに捧ぐ-海老満月(06.12.04)」(個人蔵)
(12/4)
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November 27, 2004
November 03, 2004
目黒区美術館で「日本近代洋画への道 -山岡コレクションを中心に-」を見てきた.
ヤンマー創業者の山岡孫吉の蒐集品で黎明期の日本洋画の流れを見ることができる.

1階の展示は少ないが,司馬江漢(1774~1818)の「風景」がおもしろい.墨を使った作品だが,遠近法は洋画的だ.またローマ字のサインがある.”SIBA Kookan”.クーカンだよ,これじゃ.この人は江戸系洋画家.
2階にあがって,次の部屋には長崎系洋画家の作品がある.伝 平賀源内.その他. この中では作者不詳の「婦女弾琴図」がおもしろい.”金箔を貼ったような背景を描いている!” 今朝,NHKでやってた「光琳・解き明かされた国宝の謎」を見た.科学調査で「紅白梅図屏風」の背景が金箔ではなく,金泥で描かれたものだということがわかったという話.「婦女弾琴図」でも箔足(金箔の重なり)を描いている.
他にも多くの作家の作品があった.山本芳翠,湯浅一郎は黒田清輝に学んだそうだが,確かに作品に黒田の匂いがする.
そして今回のベストは,高橋由一(1828~1894)の「鮭図」.板に描かれている.実物大に.背景は板そのままだ.
鮭の顔は脂でてかって見える.ウロコの輝きもリアルだ.それに対して身の部分は乾燥している感じがでてる.血合いの色もイイ.特に尾っぽの部分に3cmほど残った身がうまそうだ.
芸大美術館の「鮭図」の方が肉厚で脂がのってるように見える.また,身や骨の表面はみずみずしく,切ったばかりという感じだ.今回の板に描いた「鮭図」は切ってから時間が経っているように見える.鮭の首についているタグには”日本橋~(店の名前?),~川(川の名前?)”と書かれている.川に戻ってきた鮭のようだ.身が締まっていておいしそう.
鮭が食べたくなってきた!

(左が”芸大の鮭図絵葉書”,右が”山岡コレクションの鮭図絵葉書” どちらもうまそう.)
(11/3)
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October 23, 2004
永青文庫の秋季展,「永青文庫の国宝」をみた.
永青文庫は目白台の細川家の屋敷跡にあり,同家に伝わる美術品などを保存・公開している.

永青文庫が所蔵する国宝は8点.そのうち7点が展示されていた.7点の内容は刀剣が4点(鎌倉),鞍(鎌倉),銅鏡(中国・戦国),銅盤(中国・漢)となっている.国宝以外にも刀剣,鎧,鍔,など武家(細川家)アイテム目白押し.武家好き,鎌倉時代好きにはたまらない内容だ.
ぼくは刀剣に関しても予備知識のない素人なのだが,刀剣の歴史や製法も調べてみたくなった.
国宝の銅鏡(金銀錯狩猟文鏡)は金銀の象嵌でトラと剣で戦う騎乗の武人が描かれている.象嵌の精密感がイイ!
かわったものでは,江戸時代の天球儀があった.渋川春海・津田友正作.(似たものは科博で見たと思う.)
織田信長の自筆書状もあった.へろへろっとかかれている.
能面(般若)は伝般若坊作.般若坊がつくった「女の嫉妬顔」の面が有名になり,般若の面と呼ばれるようになったらしい.ここにあるのは般若の面のオリジナルだ.(伝だけど.)
以上,いろいろ書いたがすべて3階に展示されている.
2階には,2室.1室は小部屋で中国陶器・傭など.そして大きな部屋に菱田春草が2点.「落葉」(左隻).「黒き猫」.
展示室がいい.そもそもこの建物がいい感じだ.古い学校,その薄暗い音楽室に菱田春草の作品が展示されている.という感じなのだ.3階の展示も大学の研究室という感じだったが,2階はもっといい.江戸川乱歩っぽい感じだ.(表現力ないなあ・・・)
「永青文庫の国宝」は~11/21迄.冬季展は「中国の仏像」(12/7~3/5).
微妙にアクセスが悪いが,その分,隠れ家的博物館って感じでオススメです.(内容的にも!)
(10/23)
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October 08, 2004
October 03, 2004
川村記念美術館にいってきた.
大日本インキ化学工業が設立した美術館で,千葉県佐倉市にある.

お目当ては,モネの「睡蓮」だ.ブリヂストン美術館にある「睡蓮」と同じ構図の絵がホームページに出ていたので,観たくなったのだ.構図は同じだ.しかし,色合いが違う.よく観ると,睡蓮が花をつけている.川村記念美術館の「睡蓮」は1907年に描かれたものらしい.調べてみるとブリヂストンの「睡蓮」も1907年となっている.睡蓮の葉の位置も同じだから,花をつける前,つけた後に同じ場所で描いたのだろう.ブリヂストンの「睡蓮」は大好きな絵だが,川村記念の「睡蓮」も好きになった.
「睡蓮」と同じ部屋にはルノアールやマティス,ボナールなどもある.シャガールの大きな絵もいい感じだった.
次の小部屋には,立派な額に入ったレンブラントが一点.リアルでカッコイイ!
日本美術の部屋には尾形光琳の屏風,「柳に水鳥図」があった.これはすごくイイ.
とあるきっかけで,片目をつぶってみた.すると絵の奥行きが突き抜けて見えた.これはすごいぞ.片目をつぶって屏風を眺め,歩いてみると,柳の枝が立体的に奥行きを持って見える.黒い川も柳の幹の奥に見える.どれも同じ面にあるようには見えない.トリックアートのようだった.
企画展は「ロバート・ライマン」展をやっていた.
展示の仕方が良かった.白い壁に白い作品.会場全体が作品のようだ.この美術館に合った好企画だと思った.
この美術館は建物の形も面白いし,白鳥のいる池や,自然散策路がある.そのうち写真もUPします.
(10/2)
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September 23, 2004
東京都現代美術館のピカソ展を観て来ました.副題は躰[からだ]とエロス!
とてもよかった.11時過ぎに会場に入り,出たのが14時半だったので3時間楽しめたことになる.
会場に入ると正面に「青いアクロバット」.最初の部屋にはシュルレアリスム的な作品がならぶ.「青いアクロバット」はイイ.マティス展で見た切り紙絵「ブルーヌードII」を思い出す.「白い背景の裸婦」は赤塚不二夫の漫画のようだ.最初の部屋はまだ低エロスだが,乳房や性器をみつけることができる.
次の部屋は”水浴”をテーマとした作品.ややエロス増量.「三人の水浴者」はなにがなにやら分からないが,腋毛のような部分がなんとなくエロス! 「小屋を開ける水浴の女」はマリー=テレーズがモデルらしい.よく観ると乳房がある.エロス!
次の部屋には大作が多いが大作は低エロス.エッチングの裸婦の体の線はいい感じだ.マリー=テレーズがモデルの絵はエロス認定!大作「画家とモデル」はノンエロス(ぼくが気づかないだけで,実はエロスか??).しかしイイ感じだ.見飽きない.
次はオブジェと素描とエッチング.「訪問,座る女」は人間の形はめちゃくちゃだが,性器と乳房発見!エロス認定!「三人の女」は・・・エロスかなあ.性器と乳房はわかるが低エロス. 次はすごいよ.「交接」.同じテーマで何枚も描いて,その絵が変貌していくのが面白いのだが,どこまでがエロスやら・・・最後はとんでもないことになる.笑っちゃうよ.
そして大作「海辺の人物たち」.ここまで観てくるあいだにエロス認識力が向上しているので,「海辺の人物たち」は高エロスに感じる.見ている人はみんな普通の顔をしているが,内心はニヤニヤしている(はずだ).
ピカソ22歳の時の「恋人たち」は情事のあとを描いた作品だが,性器なし.でもエロス!みんな見入っていました.1971年のエッチングがある.ピカソ90歳.もちろん性器出し.ストレートエロス.枯れませんねえ.そして”肉体の賛美”と題した次の部屋はもうすごい.「横たわる裸婦」.ナイスエロス!「読書」.エロス!性器とか乳房は存在するが,それがメインエロスではない.なんかもう線の丸みやら色彩がエロスなのだ.
地下の展示場に降りると,ミノタウロスや闘牛をモチーフにした作品が並ぶ.直接的なエロスもあるが,ある意味,妄想を進めて感じるエロスかもしれない.(なに書いてるんだか.)
とにかく面白い.みんな真剣にエロスを味わっている.
これを観ればエロス認識力が向上する.間違いない!
(9/23)
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September 20, 2004
ピカソ展見てきました.損保ジャパン東郷青児美術館の方です.
ピカソが80歳の時に結婚した45歳年下の妻,ジャクリーヌ・ロックが相続した「ジャクリーヌ・コレクション」から約120点が展示されています.ピカソ晩年の作品が多数ありました.大作「闘牛士」は1970年,ピカソ89歳のときの作品です.(ピカソは1900年に19歳でした.作品の製作年に19足すと年齢になります.)
ピカソは絵を描くのが本当に楽しかったのでしょう.晩年の作品も老いを感じません.印刷されたものもイイ感じですが,大きな作品を間近に見ると作者の絵を描く動きまで感じられるようです.ピカソの筆の勢いがとても好きになりました.作品では,「闘牛士」「腕組みする男性」なんかが気に入りました.
それと,素描がたくさん展示されています.これはみないい感じです.線がいい感じです.本当に楽しそうです.おっぱいを大きく描き直していたりして・・・.見飽きません.機会があれば会期中にもう一度見たいですね.
いい作品が多かったので図録を買おうかなと思ったんですが,重いので今回も買いませんでした.「ジュニア版ブックレット」(100円)という子供向けの解説冊子を買いました.初心者にはちょうどいいです.
損保ジャパン東郷青児美術館へ初めて行きました.ゴッホの「ひまわり」も初めて見ました.そしてセザンヌの「リンゴとナプキン」.人も少なく,ゆっくり見られました.やっぱりイイ感じです.セザンヌは絵葉書買っちゃいました.
(9/20)
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September 12, 2004
国立西洋美術館のマティス展を見てきた.「変奏(ヴァリエーション)」と「過程(プロセス)」がテーマだ.土曜日の会場は結構混んでいた.
最初は「ヴァリエーション」の展示.同じテーマの作品を比較展示している.「ナスタチウムと≪ダンス≫」(←好き!)は,メトロポリタン美術館のものが展示されているが,その横にプーシキン美術館の「ナスタチウムと≪ダンス≫」のパネルが展示されている.小さなパネルと,実物の比較は難しいが,プーシキン美術館の絵は丁寧に描かれている気がする.メトロポリタンの絵が後に描かれたものではないだろうか?(音声ガイドには解説があったのかな?)踊る女性の腕から脚までつながるラインが伸びやかで美しい.
「白い服を着た若い女、赤い背景」のそばで映画「アンリ・マティス」(1945-46)をながしている.マティスが「白い服を着た~」の女の顔を描く場面の記録映像だ.モデルが出てきて椅子に座ると,マティスは服の裾をなおさせる.そして,カンバスのアップになる.マティスが女の顔を描く.顔以外は隣に掛かっている絵と同じだ.完成している.まず,眉を描き,鼻,口,目と描く.そして,また顔のないカンバスに場面が変わり,顔を書き直す.眉を描き,目,鼻,口と描く.おい.さっきと順番違うぞマティス!そして,隣にかかっている絵を見ると映画の中で書いた顔と違う!少なくとも3回は描き直したんですね.しかし,モデルが必要な顔かなあ.まあ,映画ですからね.
次は「プロセス」.自画像やアトリエの描かれた作品が続く.オダリスク萌え!マティスは製作途中の絵の写真を残した.その展示もあった.「ルーマニアのブラウス」萌え!この「ルーマニアのブラウス」は1939.12.11に描き始め1940.4.23に完成している.元の絵とまったく違う絵になっている.完成版がやっぱりかわいい.「夢」は1940年の作品だがテーブルに伏して眠る女性を描いている.先週見たピカソの「黄色い髪の女」と同じテーマだ.構図も似ているが,明らかにマティスの絵.この絵のプロセスも写真が展示されている.やっぱり完成版がかわいい.
そして最後は「プロセス/ヴァリエーション」と題して,スケッチと切り絵.切り絵もいい感じでした.
(9/11)

グッゲンハイム美術館展とマティス展の半券.(「黄色い髪の女」(ピカソ 1931)と「夢」(マティス 1940))
(9/13)
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September 03, 2004
出張の帰りに見てきました.グッゲンハイム美術館展.
入ってすぐにはルノアール,ルソー,ゴッホ,セザンヌがある.セザンヌの「ジャ・ド・ブッファン近郊」(1885-87)に見入る.筆のタッチが美しい.哲学的にすら感じる.照明が明るくてとても見やすい.セザンヌが絵と向き合ったであろう距離に立ってみる.筆のタッチが本当に美しい.パレットから絵の具をキャンバスに移した画家の絵筆の動きを想像する.立ち去りがたいものを感じる.
セザンヌの裏側にはピート・モンドリアンの「夏、ゼーラントの砂丘」という作品があった.青い砂丘に青い空,砂漠の稜線にはオレンジの日の光が描かれている.いい感じだ.
マチスは「イタリア女」(1916)という作品があった.カンディンスキーも生でみるといい感じだ.
そしてピカソが2点.「黄色い髪の女」,「水差しと果物鉢」.ともに1931年の作品だ.「黄色い髪の女」はえろい.50歳の男が30歳年下の愛人をこんな風に描くなんて.肌の色・艶がエロい.また,腕や乳を描く迷いのない線がまたエロい.ピカソよ,お前はエロ親父かと.
そして,その隣には「水差しと果物鉢」がある.抽象画だ.水差しやリンゴの輪郭の黒い線がカッコイイ.近くでみるとバランスを変えて書き直している.描きこんでる.緑の部分も乾いてから黒く汚している.また全体の感じが妙にカッコイイ.大きいのもイイ.
作品は,大まかに年代順になっている.レジェ,ダリ,マグリッド,キリコなどが続き,リクテンスタイン,ウオーホルで終わる.最後の作品はリチャード・エステルの「グッゲンハイム美術館」.この絵を素通りする人もいた.それほどリアルで写真のようだ.美術館をリアルに描いた油絵なのだが,路駐している車がカッコイイ.作者の車の趣味が良く出ているように感じた.
今回,気がついたのだが,照明はこのくらい明るいほうが絵が見やすい.当然,作品保護が最優先されるべきだが,現代の光学技術ならば作品を傷めない効果的な照明ができると思う.
(9/3)
西洋美術館の「マティス展」も面白いです.(9/13)
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August 29, 2004
ブリヂストン美術館の土曜講座は1952年に始まった.2000回記念講演(全6回)のトップを飾るのは銅版画家の山本容子さんだ.山本容子さんの銅版画は挿絵やテレビCMで見たことがある.が,それ以上には詳しく知らなかった.
はじめに山本さんはラスコー洞窟の壁画を見たときの話をされた.有名な雄牛の絵は5mもあるそうだ.またでこぼこの岩肌にシャープな線で描かれている部分もある.教科書の絵ではわからないが,現物を見ると,暗い洞窟の中で大きな絵を,いろいろな技法を使って描いた作者の「表現したい」という意思を感じるという.
山本さんの最初の作品はカミソリを描いた銅版画だ.「ピカソを超えたい.」(笑)と思い,そのためにはピカソの書かなかったもの,ピカソの時代になかったものを題材に選んだという.そして,多くの人に見てもらうために出版物に目をつけたそうだ.吉本ばななさんの「TUGUMI」の装丁で脚光をあび,以来多くの書籍のカバー・挿絵を手がけている.世界文学全集のカバー絵を手がけたときに,カバー絵を画集として出版したいと持ちかけたそうだ.しかし,絵の枚数が足りないと一蹴された.そこで,絵全体だけでなく,各部の拡大図でページを埋めることを提案し,出版を実現したという.事実だけ見ると,商業主義や自己顕示欲の強さを物語るエピソードのようにもとれるが,山本さんの口から出た言葉で聞くと,そこに「表現したい」という強い意志を感じた.
表現すること,発表することにとても積極的な方だ.また,「表現する」ことには受け手がいることをよく理解している方だと感じた.決して独りよがりにならない巧さがある.
講演の中で新聞小説の挿絵の話が出た.米・粟・そば・小豆などを日替わりで描いたという.銅版の上にそれらを並べて輪郭をなぞって,表面の質感をグラウンド(エッチングのための膜.これを削ったところが腐食されて凹になる.)に押し付けることで再現したそうだ.興味がわいたので新聞小説の挿絵をまとめた「静物画」という画集を買って帰った.これが面白い.皮膚感覚の郷愁を感じる.(8/28)
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August 22, 2004
よかった.実物を見なければ感じられない美があることを強く感じた.パンフや図録の写真では光琳・宗達のカッコよさはわからないのだ.
会場入ってすぐに「松島図屏風」(光琳)がある.繊細かつ大胆でカッコイイ.フェノロサが買い求めたものでボストン美術館蔵.琳派の芸術もまたフェノロサに見出されたのだった.ほかにも数点,屏風がある.「夏草図屏風」もまたカッコイイ.そして一番奥には「風神雷神図」.これは有名なので知っていたが間近で見るのは多分はじめてだった.とにかくカッコイイ.腕のぐにぐにもイイ.近くで見ると墨の濃淡から筆の勢いがわかる.へその周りのしわや,指から爪のラインなんかとんでもなくカッコイイぞ.
第1室が光琳で第2室は宗達・光悦.「扇面貼付屏風」(伝 宗達)がよかった.屏風の各面に扇が3枚張ってあるのだが,扇が均等に貼られていない.重なってたりする.それがいい感じだ.扇が貼ってあるというより,舞っているような動きを感じた.おそらく宗達は確信犯だ.「鶴下絵三十六歌仙和歌巻」を見ると鶴の動きがアニメか連続撮影のように描かれている.宗達の「枝豆図」もよかった.
第3室には抱一・其一など.酒井抱一の「月に秋草図屏風」や鈴木其一の「朝顔図屏風」がよかった.「朝顔図屏風」は圧巻.
第4室は近代の作家の作品.菱田春草は写実的過ぎて粋な感じがしない.横山大観「秋色」は琳派の感じが良く出ていた.小林古径「唐蜀黍(とうもろこし)」も好きだ.
第5室はRIMPAの世界と題して,現代の作家,海外の作家の作品がならぶ.福本繁樹「風神雷神」はデジタル的なカラーパレット(色見本)を描いた(貼った)屏風だ.典型的なコンテンポラリーアートだが,江戸時代には光琳もコンテンポラリーだったのだと気づかせてくれる.これも結構気に入った.
さて,出口をでると絵葉書など売ってるのだが,ぜんぜんダメ.やっぱり屏風のサイズでなきゃ.
今日はいいもの見ました.(8/22)
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August 17, 2004
横山大観(1868-1958)が画業50年目の昭和15年(皇紀2600年)に描いた「海山十題」を芸大美術館で見た.昭和15年4月に三越・高島屋で公開されたが,3月の内示会で買い手がついていたそうだ.売り上げは陸軍・海軍に各々25万円の計50万円(今の20億!)を献納.軍用機「大観号」になった.ながく所在が不明だった2作品が一昨年発見されたことから一挙公開が実現したという.
「海に因む十題」では「海潮四題・夏」・「海潮四題・冬」の波のよせる感じが好きだ.「山に因む十題」は山の頂の感じがどれも違うところがすごい.谷の雪がいい感じだったりする.「霊峰四趣・夏」の山の青色,大気のむんむんした感じがイイ.
併催の芸大コレクション展「江戸と明治の金属芸術」も良かった.江戸時代の錠前があった.3cmほどの「蟹形錠」(明珍),5cmほどの「蝦型錠」など.どれも精巧で美しい.「苞入魚置物」(松原如方)は,藁の入れ物にイセエビなどをいれたものを青銅で作った置物.海老の腰関節の艶がいい感じだった.「獅子置物」(山岸俊斎)は30cmほどの真鍮の置物.足が太く,顔も大きくてかっこいい.バランスがイイ.朝倉文夫の「吊るされた猫」もいた.
芸大美術館は1999年4月竣工.六角鬼丈設計.内も外もカッコイイ.(8/17)
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August 13, 2004
ギリシャ時代のアッティカ黒像式陶器に描かれた「英雄ヘラクレスと地獄の番犬ケルベロス」について中村るい氏が解説してくれた.
ヘラクレスはギリシャ4大英雄(ペルセウス(対メデューサ),アキレウス(トロイア戦争),セテウス(対ミノタウロス))の一人.ゼウスと人間(王女 アルクメネ)の間に生まれたヘラクレスは,ゼウスの正妻ヘラに嫉妬され,生後8ヶ月で寝所に蛇を投げ込まれたりするのだが,蛇を握りつぶしてすくすく成長する.その後,狂気に襲われ,妻子を火の中に放り込んでしまい,デルフォイの神託を仰ぐ.そして神託のとおりに「12の難業」を受けるのだ.
その「12の難業」の最後に来るのが「地獄の番犬ケルベロス」の生け捕りである.ブリヂストン美術館にある陶器に描かれた「ヘラクレスと地獄の番犬ケルベロス」はBC6c頃の巨匠エグゼキアスの描いた図案と同じアテナ・ヘルメスとともに勝利の行進をするヘラクレスの図である.この図案とともにポピュラーなのがケルベロスをなだめるヘラクレスの図案で,BC520頃からはやっていたらしい.
スライドで見せてもらったケルベロスをなだめるヘラクレスの表情がイイ!中村さんは英雄の内面の成長を描いていると解釈するが,なるほど,難業をこなしてきた英雄の知恵・余裕を感じる.そういう英雄の図案を描いた陶器を日常生活で使っていた古代ギリシャ人はどんなことを考えていたのだろう.
ギリシャ神話を予習してから古代美術を見るときっと面白いと思った.
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July 31, 2004
1923年に描かれた「腕を組んですわるサルタンバンク」は,ピアニストのホロヴィッツが1945年から1970年のあいだ所有し,2階の居間に飾っていたという.その後,NYのコレクターの手に渡り,1980年にブリヂストン美術館の所蔵となった.
今回の土曜講座の講師は大森達次氏(女子美術大学教授).パワーポイントを使った映像はスライドより明るくて見やすい.表題の絵画を所有していたホロヴィッツの紹介にもビデオを使ってくれた.
サルタンバンクはイタリア語のサルティンバンコ(ベンチの上で跳躍する者)を語源とするフランス語で曲芸師の意味である.ピカソのモチーフにはアルルカン(道化師),アクロバット(曲芸師)などが多い.
ピカソは1918年7月にロシア将校の娘オルガと結婚した.1917年にバレエ「パラード」の舞台幕・装置・衣装をピカソは手がけたが,その舞台に立ったオルガに結婚をせまられたらしい.1918年に描いた「ヴァイオリンをもつアルルカン」では,アルルカン(=ピカソ)の手に持たせた楽譜に”SI TU VEUX”(お望みなら)と書いている.”SI TU VEUX”はサティの”JE TE VEUX”(邦題:あなたが欲しい)のパロディらしい.
結婚してピカソはブルジョワ生活を余儀なくされるわけだが,あまり居心地は良くなかった.ピカソは2階にアトリエを設けて製作したが,2階に妻オルガは入らなかったそうだ.1921年には息子が生まれる.「~サルタンバンク」はそのころ描かれたが,本来は放浪することを本質とするはずのサルタンバンクが椅子に腰掛けている姿は矛盾している.これは,ブルジョワ生活になじまない自分の居心地の悪さを表現している.と大森氏は解釈する.
「~サルタンバンク」ではもう一人人物が描かれた痕跡がある.この構図は「恋人たち」(1923)に似ているが,中途半端に消されている.奥さんを消したかったのかとも勘繰れる.その後ピカソは10代の娘との浮気が原因で離婚するわけだが・・・.
ホロヴィッツは1925年にロシアを出てから1986年にモスクワでコンサートを開くまで故郷に帰らなかった.また1941~1951頃,アクロバティックな編曲・改曲で人気を博した.そんなこともあり,放浪の曲芸師を描いた「~サルタンバンク」を好んで友人たちに見せびらかしたのだろう.
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July 18, 2004
先週おもしろかったので今週も土曜講座を聴講した.講師はブリヂストン美術館副館長の宮崎克己氏.セザンヌの研究家である.同館所蔵のセザンヌ作「サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール」を徹底解説してくれた.講義は画題であるサント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワールの説明に始まり,実景との比較からセザンヌの作風を論じ,セザンヌの作風が画家・評論家に与えた影響を通して「サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール」を鑑賞するというものであった.
土曜講座はイイ.絵画をみたくなる.
<以下,覚書>
「サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール」は,原善一郎(原三渓の息子)が1922~23にパリで購入した4点の絵画(セザンヌ2点,ドラクロア2点)のうちの1点.
セザンヌ(1839-1906)は南仏マルセーユの内陸20kmほどにあるエクス=アン=プロヴァンスに生まれ,エクスでなくなっている.エクスはスエズ運河ができる前はマルセーユよりポピュラーな町だった.サント=ヴィクトワール山はエクスの東方8kmのところにある標高1011mの山である.シャトー・ノワールはエクスとサント=ヴィクトワール山の中間にあるネオゴシック建築の建物で,19世紀なかばに石炭採掘の実業家が作らせた.建物は黒くないがノワールといわれるのは石炭業者のイメージかもしれない.また,黒魔術のうわさなどもあったそうだ.セザンヌは裕福な家に生また.父の遺産が手に入ったときに,シャトー・ノワールを手に入れようとしたが,かなわなかった.
「サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール」を実景の写真と比べると,奥行きをせばめて山がおおきく描かれている.ほかの風景画も遠近感は説明的ではない.しかし,実景に忠実で,デフォルメされていない.(枝振りとか)
フォーマリズム(20世紀前半,ロジャー・フライなど)の見方では,対象(山・家)を問題とせず,色・形を論じる.音楽と対比するアナロジーをもちいることがある.
セザンヌの空間配置はマチスに影響を与えた.遠近法にとらわれない空間配置.マチスはセザンヌの天使のオブジェの絵に影響をうけ,裸婦を描き,それを彫刻し,それを自由な空間配置で描いている.
ピカソ,ブラックもセザンヌの純粋化された形態に影響をうけた.「自然を円柱・球・・・に還元して遠近法の中に入れなさい」(セザンヌ 実は当時の教科書のなかにあった言葉)この純粋形態の考え方はキュビズムに発展する.またル・コルビュジェの近代建築も純粋形態である.セザンヌのシャトー・ノワールの単純化された形態は近代建築のようだ.
知覚・認識的な見方もあった.(ノヴォトニ.~1950頃) 「美しい」と感じる背後にあるものを論じる.女性を美しいと感じる理由を生物学的な欲望に求めるような考え方.なにを美しいと感じるかは「世界認識」である.絵画は「世界認識」を表現する.たとえば,ダビンチの線遠近法(消失点を決めて作図し,背景・舞台装置を描いてから人物を配する)はダビンチの世界認識をあらわし,セザンヌの対象を描き座標軸を持たない空間配置はセザンヌの世界認識を表す.人間の視覚は対象のみを強く認識するので,セザンヌの世界認識は人間の視覚による認識にちかい.
意味論的な見方もあった.(シャピロ) フォーマリズムに対抗する見方で,対象の象徴する意味を衒学的に考察する.「りんご=欲望」とか.
社会史的見方もある.(ルイス)セザンヌが「サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール」を描いたのは普仏戦争敗戦後の時代で,フランスでは愛国主義が起こっていた.愛国主義の象徴として,国を代表する山を描いた.
宮崎さんは,セザンヌの風景画を神の作った宇宙としての自然を描く風景画の終焉と捕らえる.ルネサンス以前は現世(自然)を否定して,神の世界,神話世界にあこがれる時代であったが,ルネサンス期に現世を神の作った世界として肯定するようになる.そしてバロック期に神の宇宙の調和を描くことが盛んになるが,18世紀末には神の宇宙の考え方は崩壊し,神の宇宙として自然の美を描く風景画は消えていく.セザンヌの風景画は,その時代に描かれた「神の宇宙」の残像である.(難しいくて理解が追いつかないのだが,宮崎さんの絵画史の捕らえ方は「世界認識」の考え方と「社会史的な見方」をあわせたもののように感じた.)
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July 10, 2004
ブリヂストン美術館の土曜講座を聴講した.講師は植野健造氏(石橋美術館).青木繁が代表作『海の幸』(石橋美術館蔵)を描いた1904年を植野さんは日露戦争開戦の年と説明し,その時代を描いた司馬遼太郎の『坂の上の雲』を紹介した.島田譲二氏の同書の解説を引用し,エリートたちが当時の花形である軍事に進む反面,芸術に独自の才能を開花させる若者がいた時代であったと説明した.
植野さんは青木の生涯を作品やエピソードとともに紹介してくれた.青木はプライドの高い男であったようだ.数学で落第しているのに,自伝の草稿ではすべての学科が良くできたと書いていた.また,乱視でメガネをかけていたが,メガネをかけた自画像は描いていないという話も青木のこだわりを感じさせる.集合写真ではいつも一番後ろに立ったそうだ.
青木の生涯の説明とともにスライドで紹介していただいた青木の作品はどれもすばらしく印象深いものだった.青木の作品は『海の幸』のように塗りこめられていない(未完成であると展覧会で評価される)作品から塗りこめられた作品へと変わってゆく.自信作『わだつみのいろこの宮』を博覧会に出品するが3等賞どまりだった.しかし,このときの作品の中で『わだつみのいろこの宮』だけが重要文化財に指定されている.植野さんは「時代によって作品の評価は変わるので,生前に評価されない画家は大変ですね.」といわれたが,作品の価値は普遍であると感じているようでもあった.
『海の幸』を描いた1904年は青木にとっても青春絶頂期(坂の上の時期)であった.1907年の父の死をきっかけに家族絶縁し,放浪の果てに病に倒れ,1911年,享年28歳の若さでなくなっている.
今回はじめてブリヂストン美術館の土曜講座を聴講したが,2時間の講義で青木繁とその作品にとても親近感をもてた.作家の素顔,その生涯を知ることは作品を味わう上で重要だと感じた.『海の幸』は来年,ブリヂストン美術館に来るそうだ.
ちなみに,ブリヂストン美術館では現在「巨匠たちのまなざし」と題して収蔵品のベストラインナップを展示している.絵画史の教科書になりそうな展示です.いいもの持ってるなあ.
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