夏休みを利用して倉敷にある大原美術館にいってきた.今回が初めての訪問だ.

大原美術館は国内の美術館を特集した記事などにはよく顔をだす美術館なので,ギリシャ建築風な本館の写真は目にすることがある.(上の写真参照) このような写真から,広い前庭の奥にどっしりと建っていると想像していたが,実際は門をくぐるとすぐ目の前にギリシャ風の本館は控えていた.ちなみに門の外には運河が流れている.この運河沿いの地域が美観地域になっている.

大原美術館はいくつかの建物で構成されている.
本館:西洋の近代・現代美術(印象派を中心とした画家・児島虎次郎のコレクション)
分館:日本の近代・現代美術
工芸館+東洋館:民芸+東洋古代美術
以下,それぞれの感想を記しておく.
<本館>
大原美術館の入館券は1日有効で,なんどでも出入りすることができる.本館には昼間に一度入館し,夕方,再訪した.昼間は観覧者がおおく,ゆっくり絵を見る気分になれなかった.観光地の中心にある美術館なので,美術に対する興味には関係なく,皆が足を向けるのだろう.さいわい土曜日は開館時間が延長されていたので,夕方の人の少ない時間にゆっくりと観てまわることができた.
最初の印象だが,絵画・建物(壁)ともに古いなあと感じた.額もちょっとくたびれた感じだ.
しかし,絵には面白いものがある.エル・グレコやゴーギャン,キリコは完成度が高く,イイ感じだ.マティスの作品も気に入った.
マティスの「マルグリット嬢の肖像」は,ブリヂストン美術館にある大好きな作品「縞ジャケット」と並べてみたくなる作品だ.縦長のカンバスに(おそらく)同じモデル(マルグリットなら娘)を描いている.
モネの「睡蓮」も好きな絵なのだが,ブリヂストン美術館の「睡蓮」のほうが好きかなあ.
本館は2階の連絡通路で新展示棟につながっている.こちらに現代美術が展示されている.熊にひっかかれたような切口のあるフォンタナの「空間概念」やジャクソン・ポロックの「カット・アウト」は近代美術館の痕跡展で見知った作品だが,倉敷で出会うとまた新鮮な感じだ.
サム・フランシスを集めた部屋もあるが,壁が汚く,興ざめ.
<別館>
ここは楽しい!
まず,青木繁.小品だし完成度も低いが,青木繁好きにはうれしい.
大きな部屋には,小出楢重,佐伯祐三,藤田嗣治など.好きな作家が多い.
なかでも佐伯祐三がカッコイイ.パリの街を描いた「広告”ヴェルダン”」.うまく言えないがカッコイイんだよな.異郷の地でうろたえていない.そして郷愁を感じることもなくカンバスに向かう画家の強さが感じられる.
もう一点,「陽の死んだ日」(熊谷守一).死んだ息子の枕元で描いた作品だ.悲しみや怒りをカンバスにぶつける作家の姿が目に浮かぶようだ.しかし,その中にも絵のうまさがある.それがいっそう悲しい.『~画家は当時を回想して、「~”絵”を描いている自分に気がつき、嫌になって止めました」と語っている。』(「日本の美術館を楽しむ No.2 大原美術館」の山下裕二氏の記事より引用).味わい深い作品だ.
別館の地下がまた楽しい.地下は現代美術の展示室で大きな作品,大きなオブジェが多数展示されていた.田嶋悦子の奇妙な花をモチーフにした大きなオブジェが気に入った.
<工芸館+東洋館>
いよいよ,工芸館+東洋館だ.工芸館と東洋館は展示室となる複数の倉から構成されており,倉ごとに特定作家の展示室になっている.それぞれの倉はひとつにつながっている.(下写真参照.)展示をプロデュースしたのは芹沢銈介.

展示されているのは,いわゆる民芸運動の中心になった作家の作品だ.こういう作品は倉の中で展示すると実にイイ感じだ.特に驚いたのは棟方志功.棟方志功の作品は,印刷物で見るとそれなりに味わい深いのだが,実物をみても,どこかそらぞらしい感じがして,あまり好きではなかった.しかし,この棟方志功を展示した倉はびっくりするくらいイイ感じだった.特に壁中央の目線よりかなり高い位置に展示した「門舞神板画柵(10枚組)」は壁全体を額にして収まっているようにみえる.作品も展示室になっている倉も同じような素朴なぬくもりを持ち,絶妙に馴染んでいる.棟方志功の作品は,こういう環境で見るのがベストかと思う.民芸というのはこういう感じを楽しむものかもしれない.これは得がたい快感だ.

今回の旅行では,大原美術館と倉敷市美術館が面白かった.そして,町並みを歩くのが楽しかった.
倉敷の美観地域は日中は観光地という感じでざわついているが,夕暮れ時にはグッといいムードになる.